2012(平成24)年第1回市議会定例会(3月議会)教育委員会施政方針
平成24年度教育行政の施策について申し上げます。
昨年3月11日に発生した東日本大震災では、社会の一員として守るべき規範意識の醸成や社会の変化に対応できる実践的な力、すなわち、「生きる力」の育成が大切であることを再認識させられました。また、以前にも増して「人と人との絆」が問われるようになりました。
次代を担う子どもたちが心身ともに健康に成長していくために、真に重要な支援は何かを見極め、より質の高い教育を行うことが不可欠となっています。
子どもから大人にいたるまで、いつでも自由に学習の機会を選択し、生涯にわたって学び続けられる環境づくりを推し進めていくことが、「生きる力」を具現化するためには重要と捉えています。
教育委員会としましては、教育行政の基本方針を「個性を尊重し、互いに学びあう生涯学習の実現」とし、以下の三つの施策を展開していきます。
第一の施策は、「市民が生涯にわたっていきいきくらすための学習体制の充実」です。
一つ目の重点は、「生涯学習機会の充実」です。
市民の学習活動が自己啓発やまちづくり活動として発展していくよう、市民のニーズに配慮するとともに、社会や地域の課題に対応した学習機会の充実を図ります。
生涯学習出前講座は、現在、市民講師メニューが92講座、市役所メニューが84講座です。
24年度は、講座のPRに努めるとともに、地域の大学等との連携による講座を創設し、講座内容の充実と利用の促進を図ります。
次は、公民館事業の充実についてです。
公民館では、子育て、高齢期の生き方や地域を知る学習など、ライフステージに合わせたテーマやまちづくりへとつながる学習機会の充実に努めます。
特に、家庭教育の充実が重要な課題となっていることから、学校や地域と連携し、効果的な学習機会を提供するよう努めます。
24年度は、我孫子地区公民館での家庭教育学級、のびのび親子学級のほか、湖北地区、布佐地区での短期的なプログラムや学校行事に合わせ、保護者が集まる機会をとらえて家庭教育に関する学習機会を提供します。
また、小中学生を対象とした体験型の学習講座「アビコでなんでも学び隊」は、引き続き企業や市民の協力を得ながら、内容の充実に努めます。
次は図書館サービスについてです。
まず児童へのサービスについては、子どもが読書に親しめるよう、保護者やボランティアによる読み聞かせ活動を支援し、学校図書館の整備・充実に協力するなど、学校と連携して子どもの読書環境の向上に取り組んでいきます。
一般・成人へのサービスでは、患者やその家族などの体験記を1か所に集めた闘病記コーナーをアビスタ本館に設置するとともに、医療・健康関連図書の一層の充実に取り組んでいきます。
また、24年度より図書館資料の長期延滞者に対する利用制限を開始し、資料の公平で効率的な活用に努めていきます。
次は、鳥の博物館です。
博物館では、館内の展示のより一層の充実を図り、学芸員・市民スタッフによるわかりやすい館内ガイドを行うなど、多くの来館者に親しまれる博物館となるよう努めていきます。また、財団法人山階 鳥類研究所の協力を得ながら、研究所研究員から最前線の専門的研究成果を紹介していただく「テーマトーク」も継続していきます。
館外活動としては、24年度も「てがたん(手賀沼定例探鳥会)」、「あびこ自然観察隊」などを引き続き実施していきます。
鳥の博物館は、今後も、鳥の調査研究や教育普及を通じ、さまざまな自然・環境についての情報発信基地としての活動を続けていきます。
二つ目の重点は、「生涯学習体制の充実」です。
生涯学習活動の推進組織である「あびこ楽校協議会」では、あびこ楽校ニュースの発行、人材情報・団体グループ情報などの学習情報の提供や生涯学習の啓発をテーマとした講演会の開催、生涯学習に関する相談などの事業の充実を図り、市民の学習活動を支援していきます。事業推進にあたっては、企業や大学との連携強化に努めます。また、その学習活動の成果が地域でいかされるよう取り組んでいきます。
三つ目の重点は、「スポーツの振興」です。
はじめに、総合型地域スポーツクラブの育成についてです。
地域住民が主体となり、スポーツ活動を通して健康づくりや交流ができる地域スポーツのクラブ化を進めています。現在、6つの中学校区にそれぞれクラブを設立しました。24年度は、これらクラブの活動拡充のためにスポーツ推進委員を派遣するなどの支援を行うとともに、新たなクラブづくりを進めます。
次に、市民体育館の改修についてです。
市民体育館は、開館後26年が経過しました。利用者の安全性、快適性を維持する必要があることから、24年度は野球場施設の防球ネットと支柱の改修工事を実施します。
第二の施策は、「子どもの創造性と自主性をはぐくむ教育の充実」です。
一つ目の重点は、「学校教育の充実」です。
はじめに、心身ともに健康な児童・生徒の育成についてです。
思いやりのある豊かな心を育むため、人権・人間尊重や社会性を育む規範意識の醸成など、人間形成のための教育を推進します。
未曾有の震災による混乱や失意の中においても、規範意識・公徳心を失わず、復興に向けて活動する姿は誇らしくもあり、正に培うべき姿とも言えます。
このため、人間関係形成力や相手を思いやる道徳教育が重要となりますので、道徳以外の教科との関連も図り、教育活動全体で道徳教育を推進します。
また、子どもたちが自分の健康や体力に関心を持ち、正しい食生活、運動習慣などの定着を図り、バランスの取れた健やかな体づくりに積極的に取り組むよう、保健体育の授業改善、食育の改善、薬物乱用防止教育の推進を支援します。
特に、食育については、食の安全に十分配慮しながら、地産地消を推し進める意味でも、全小中学校における我孫子産米と我孫子産野菜の給食導入事業を継続・充実させ、子どもたちに地域の産物や生産者への関心を高められるよう働きかけます。
次は、子どもたちの確かな学力の育成についてです。
24年度から中学校においても、新しい学習指導要領が実施されます。各学校において、指導方法や校内研究の在り方、研究体制に工夫を加えるなど教育課程の実施が順調に進むように支援していきます。また、23年度より小学校5・6年生で実施されている週1単位の外国語活動については、24年度から教育課程特例校に認定された並木小学校を中心に、ALTとの連携をとり、指導内容の工夫を図ります。小学校の外国語活動が、コミュニケーション能力の素地を養うとともに、中学校の英語学習への円滑な移行につながるよう取り組んでいきます。
さらに、教育の情報化を推進するために、情報モラルを含めた情報教育のカリキュラム開発を支援するとともに、コンピュータ、電子黒板、地デジ対応テレビなどのICT機器を活用したわかりやすい授業づくりを進めていきます。
次は、教育相談・支援体制の充実についてです。
全ての児童・生徒が明るく楽しい学校生活が送れるよう、「魅力ある授業づくり」「人間関係を深める学級づくり」を基本に据え、児童・生徒の困り感の解消をめざし、事業展開を図ります。
特別支援教育では、特に、特別支援教育コーディネーターへの指導・助言や研究所アドバイザー事業を通した学校への支援などとともに、校内委員会の機能の充実・強化を図り、子どもたち一人ひとりの教育的ニーズに対応する教育を進めていきます。
不登校対策では、スクールカウンセラーや心の教室相談員、そしてヤング手賀沼等の関係機関と学校との連携を深め、横断的な指導・支援体制を強化し、不登校の改善・解消を図るとともに、予防の観点から、特別支援教育の考え方を授業や学級づくりにいかすことができるよう学校支援に努めます。
また、いじめの解消や不登校の防止などに向け、よりよい人間関係を構築するため、23年度に引き続き、学級の満足度や生活意欲に関するアンケート(Q-U検査)を全小中学校で実施し、子どもたち一人ひとりの実態把握、学級集団の状態などを分析し、具体的な改善策を展開できるよう支援していきます。
次は、安心して快適に学べる教育・学習環境の充実です。
24年度は、小中学校体育館の耐震化として、我孫子第一小学校、我孫子第四小学校、高野山小学校と湖北小学校の4校において、耐震化工事と併せてトイレ改造工事などを実施していきます。
また、我孫子第二小学校においては、教室が不足することから6教室分の増築工事を実施します。
放射能対策では、市の除染計画に沿って8月末を目標に、校庭や校舎周りなどの除染を着実に行っていきます。
学校給食においては、給食に使用する食材・食品の放射性物質のサンプリング検査のほか、給食一食分をミキサーにかけ、均一に撹拌したものによる放射性物質の検査を継続・充実していきます。
このほか、プールの水の放射性物質の検査や学校ごとの放射線量マップの作成・公表などを引き続き行っていきます。
これらの放射能対策を進め、子どもたちの受ける放射線量がさらに低減するよう努めていきます。
通学区域の見直しでは、根戸小学校と久寺家中学校の児童・生徒の増加に対応するため根戸小学校、我孫子第四小学校及び久寺家中学校の学区の一部を選択通学区域とすること、また、布佐南小学校の児童の減少に対応するため新木小学校の学区の一部を布佐南小学校の学区に変更することについて、この2月24日に、通学区域審議会から、概ね諮問どおりの答申をいただきました。24年度は、この答申を踏まえ、25年度実施に向けて、計画策定、該当する保護者への説明会を行うなどの準備を進めていきます。
二つ目の重点は、「地域に根ざした教育の充実」です。
地域全体で学校教育を支えるしくみづくりに取り組みます。
学校の教育方針やめざす児童生徒像を実現するため、学校を含め、新しい地域コミュニティの構築に向けて連携をさらに深め、開かれた学校づくりをめざします。
学校教育を地域全体で支えるため、市内の全小中学校に設置されている学校支援地域本部を中心に、自然や歴史、文化、人材などの地域資源を学習や部活動に活用していきます。
学校評価制度については、各学校が共通して取り組む目標の設定や、評価方法を定める我孫子市小中学校評価システムを策定し、制度の充実を図っていきます。
地域に密着した学習の場の提供については、子どもたちが地域に愛着と誇りを持ち、心豊かに育つように我孫子ならではの地域資源をいかした教育の推進を図ります。
そのために、我孫子が誇る先人に関する学習補助教材「我孫子の先人」を作成し、我孫子市の中学生全員に配付します。
併せて、22年度から開発に取り組んでいる地域を学ぶ「ふるさとカリキュラム」によって、先人の偉業と関連させた学習ができるようにしていきます。
キャリア教育については、地域の事業所の協力を得て、市内全小中学校で職場体験や職場見学を実施しています。その成果や課題を整理し、より一層の充実を図ります。
三つ目の重点は「子どもの成長・自立への支援」です。
子どもの健やかな成長を促す場や機会の充実については、青少年団体とも連携して取り組んでいきます。
非行防止活動と悩み相談体制については、街頭パトロールの推進、関係団体・機関との連携強化により取り組んでいくほか、市民への正確で迅速な情報提供にも努めます。また、いじめや不登校の予防・解消に取り組むとともに、経済的理由で就学に支障を来さないよう就学援助制度を運用していきます。
第三の施策は、「文化芸術活動への支援と地域文化の継承」です。
一つ目の重点は、「文化芸術の振興」です。
「我孫子市文化芸術振興基本方針」に沿って、市内でさまざまな文化芸術活動をされている方々とともに、市民文化祭や子どものための舞台鑑賞事業など、文化芸術の振興を進めていきます。また、団体の活動が充実し、さらに発展するよう共催事業や後援事業の拡充に努めていきます。
また、子どもたちが創作活動に親しみ、豊かな感性を育むことを目的とした「めるへん文庫」事業を引き続き行います。
24年度は、本年度の受賞作品「めるへん文庫第9集」の刊行と、第11回の作品募集を行います。
二つ目の重点は、「地域文化の保存と継承」です。
古くから市内に伝わる神楽舞や祭囃子などの伝統芸能の継承者を育成し、地域ぐるみで支え次世代に継承していくことをねらい、市内の継承団体と小中学校の郷土芸能クラブの生徒の出演による郷土芸能祭を、12月2日(日曜日)に開催します。
三つ目の重点は、「歴史的・文化的遺産の保存・活用」です。
「手賀沼文化拠点整備計画」に基づく24年度事業としては、寿古墳公園での古墳の再整備と旧村川別荘の屋根の修理工事を行います。訪れる方々が手賀沼沿いに広がった歴史と文化を学び、我孫子の良さを体感できる場所として再整備を進めます。
23年度にオープンした杉村楚人冠記念館については、常設展示の他、楚人冠を取り巻くさまざまな人々を題材とした企画展示を行い、入館者の増加を図っていきます。
埋蔵文化財の調査・研究においては、発掘調査報告書の刊行を進め、地下に埋もれた我孫子の歴史に光を当てていきます。
井上邸については、土地の取得や登録文化財の建物調査など、保存に向けての事業に取り組みます。
以上、教育委員会の施策について述べましたが、事業の推進にあたり、議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。