平成28年度夏期企画展「ことばに向き合う ~新聞記者杉村楚人冠の国語論」
展示概要
杉村楚人冠は大正時代に臨時国語調査会に加わっていたため、当時の国語国字問題に関する貴重な資料が残っています。この臨時国語調査会の資料に、いくつかのトピックを加え、杉村楚人冠や当時の人々がどのようにことばに向き合っていたかを知る展示を開催しました。
展示期間
2016年7月12日(火曜日)から10月2日(日曜日)
展示内容
1 臨時国語調査会
楚人冠が委員に任命されたときの辞令や、議事録、名簿を展示しました。
議事録は国号を「ニッポン」に定める案を決めたときのものです。
臨時国語調査会委員辞令
2 かなづかい改定とふりがな
発表とともに大きな議論を巻き起こしたかなづかい改定案ですが、今使っているかなづかいの原点でもあります。改定案の採用を求める建議書を展示しました。また、ふりがなについては存続を主張する楚人冠の評論と、楚人冠への反対論が掲載された『国語教育』の切抜きを並べて展示し、議論が分かれていた様子を示しました。
かなづかい改定案の採用を求める建議書
3 漢字制限とやまとことば
漢字制限は、印刷技術、教育の両面からの要請でもあり、また楚人冠は難解な熟語、特に新造語の使用を抑え、やまとことばを大切にする趣旨でも宣言の必要を訴えました。大阪毎日新聞社と東京朝日新聞社で使われた用語集、漢字表や、楚人冠がやまとことばを題に使った著作を展示しました。
やまとことばを題に使った杉村楚人冠の著作の例
4 方言を大切にする
楚人冠がことばに向き合う態度として、方言を大切にしていたことも重要な要素です。方言の叙述を取り入れた著作の一節と、『和歌山方言集』作成に使ったカードを紹介しました。
杉村楚人冠作成の方言カード
5 「世界共通」を夢見た人々
楚人冠の人脈に注目すると、国際共通語エスペラントの普及に取り組んだ人もいました。学友の一人が南北朝時代の『神皇正統記』をエスペラントに訳した書籍を展示しました。
エスペラント訳『神皇正統記』