下ヶ戸貝塚
下ヶ戸貝塚は我孫子市のほぼ中央、北に利根川を望む台地の縁辺にある縄文時代後期から晩期の遺跡です。
現在の川村学園女子大学の南に位置しています。
1981~2015年(昭和56年から平成27年)に7次の発掘調査が行われました。
最初の発掘調査では19軒の住居跡が見つかりました。
最初の調査範囲は「下ヶ戸宮前遺跡」と呼んでいます。ここで出土した遺物は通常の土器の他に耳飾や石棒・土偶等の祭祀に使われたと考えられるものが多数見つかっています。
遺跡全体の遺構平面図
千葉県史料研究財団編『千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)』(平成12年発行)p981
出土遺物
後期の土器
深鉢
堀ノ内1式
口径:27.0センチメートル
高さ:35.4センチメートル
底径:12.0センチメートル
縄文時代後期前半の土器です。
口縁がややすぼまる形の丸みを帯びた器形をしています。
表面には前面に縄文が施され、沈線で渦巻き文様などが描かれています。
鉢
安行2式
口径:17.5センチメートル
高さ:7.8センチメートル
底径:5.3センチメートル
縄文時代後期末の土器です。
お皿の形をしています。食事を盛るのに利用したのでしょうか。
深鉢
安行2式
口径:18.8センチメートル
高さ:15.0センチメートル
底径:10.0センチメートル
縄文時代後期末の土器です。
平底で底部がやや四角い珍しい形をしています。豚鼻状突起がところどころに貼り付けられています。
深鉢
安行2式
口径:16.0センチメートル
高さ:21.5センチメートル
底径:2.3センチメートル
縄文時代後期末の土器です。
底部の径が小さく尖ったような形をしています。口縁部に3つ、鶏冠のような突起がつけられています。
注口土器
安行2式
最大径:21.5センチメートル
高さ:22.7センチメートル
縄文時代後期末の注ぎ口のついた土器です。
器面の上部にはミミズのような細い粘土紐などを用いて複雑な文様が描かれています。
下ヶ戸貝塚では晩期の注口土器も出土しています。
また、下ヶ戸貝塚から東に3km離れたところにある古戸貝塚でもこの土器と同じ時期に作られた注口土器が出土しています。
晩期の土器
鉢
安行3a式
口径:18.0センチメートル
高さ:10.0センチメートル
底径:-(丸底)
縄文時代晩期前半の土器です。
底部は袋のように丸みを帯びており、口縁端部が外側に折れるような形をしています。
浅鉢
安行3a式
口径:23.5センチメートル
高さ:13.2センチメートル
底径:12.0センチメートル
縄文時代晩期前半の土器です。
たくさんの突起がつけられた重厚なデザインに作られています。
深鉢
安行3a式
口径:19.8センチメートル
高さ:29.2センチメートル
底径:3.5センチメートル
縄文時代晩期前半の土器です。
口縁部の4箇所に突起が作られて波状の口縁を呈しています。
深鉢
安行3b式
口径:16.4センチメートル
高さ:16.5センチメートル
底径:?
縄文時代晩期前半の土器です。安行3a式より少し新しい時代のものです。
晩期安行式で多く見られる三又文が水平に伸びた形で描かれています。
深鉢
安行3b式
口径:28.0センチメートル
高さ:31.7センチメートル
底径:?
縄文時代晩期前半の土器です。甕のような形をしています。
横向きになった逆S字が入り組むように横に連続して描かれ、波頭状の文様が表現されています。
注口土器
安行3a式
口径:19.5センチメートル
高さ:21.3センチメートル
底径:-(丸底)
縄文時代晩期前半の注ぎ口のついた土器です。
口縁部は若干欠損しており正確な形が分かりませんが、突起のような飾りがついていたようです。
器面にはしっかりとした太い沈線で三又文などが描かれています。
土製品
ミミズク土偶
安行式
高さ:15.6センチメートル
幅:9.8センチメートル
有孔土製円盤
中央のものが径10.5センチメートルで、厚さは1センチメートルほどあります。
中央に大きな穴が開けられているのが特徴です。
その周囲に小さい穴が穿たれていますが、中央のものは8つ、左のものは1つ、右のものは9つ、と一定しません。
全体の仕上げも左や中央のように粗雑なもの、右のように磨きをかけているものなどいろいろです。
用途はまだわかっていません。
耳飾
一番大型のものが径7.0センチメートル、高さ2.0センチメートルいろいろな形と大きさのものがあります。
現在のピアスは左右同じ形のものをつけますが、
ここで出土したものでペアになるものはありません。
どういう付け方をしていたのでしょうか?
装着想像図
土製品
香炉形、手燭形、蓋、動物模倣品、小型土器などがあります。
上段左から2点目の香炉形土製品は高さ11.0センチメートル
人面土版1
おもて面
高さ:16.2センチメートル
幅:8.4センチメートル
裏面
人面土版2
人面土版2
おもて面
裏面
高さ:7.5センチメートル
幅:5.8センチメートル
土製品
表側
裏側
側面
長さ:8.3センチメートル
幅:5.4センチメートル
高さ:8.0センチメートル
亀の甲羅のような形をした土製品です。用途は良くわかりません。
長辺の片側に穴が一つ開けられています。紐をとおして首から提げたお守りかもしれません。
実測図
石製品・貝製品・骨角器
石鏃
右から8列目上から4個目がメノウ製で長さ3.6センチメートル
打製石斧
一番右側のもの(石皿を再利用)
石質:絹雲母片岩
長さ:16.0センチメートル
幅:5.2センチメートル
磨製石斧
一番左側
石質:不明
長さ:15.2センチメートル
幅:6.2センチメートル
石錘・土錘
上段左の2点と下段左の3点が石錘 他は土錘です。
上段左側端
長さ:5.4センチメートル
幅:3.8センチメートル
厚さ:1.2センチメートル
石棒・石剣・独鈷石
左端の石剣
長さ:30.5センチメートル
幅:5.0センチメートル
左から1~4本と、同じく左から5列目の下段が石剣です。上段右端が独鈷石。他は石棒です。
貝製品
上段が貝輪。左4点がベンケイガイ、右1点がアカガイ
下段はタカラガイ、マガキガイ、イモガイの素材及び未製品です。
骨角器
材質:鹿角、鹿骨、猪牙など。左端の鹿骨製ヤスは長さ16.0センチメートル
垂飾品
狼の下顎骨を加工しています。長さ14.5センチメートル
発掘調査写真
住居跡
三回建て替えています(方形→円形→6角形)
発掘調査風景