我孫子市市制施行50周年・我孫子を知る1年企画展「随筆に書かれた我孫子のむかし」
我孫子市市制施行50周年を記念した生涯学習部の「我孫子を知る1年」シリーズとして実施した企画です。
杉村楚人冠の随筆と、そこに登場する人びとの暮らしぶりに関わる民具などを組み合わせ、「我孫子のむかし」がわかる展示としました。
展示期間
令和2年10月3日(土曜日)から令和3年1月11日(月曜日・祝日)まで
展示概要
盛んだった鴨猟
堀内讃位『日本鳥類狩猟法』
「青頸青頸と東京の人は無暗に真鴨を賞するが、味は必ずしも真鴨ばかりがよい訳ではない。真鴨でないのをこの辺では雑鳥ととなえているが、その雑鳥の中にも、遥かに真鴨より旨いものがある。」(杉村楚人冠『続々湖畔吟』より)
かつて手賀沼では盛んに鴨猟が行われていました。堀内讃位著『日本鳥類狩猟法』(昭和14年、三省堂)からその様子を紹介するほか、かつて我孫子市域の人びとが鴨猟に使った張切網を展示しました。
我孫子の名人、鷹大工
佐藤鷹蔵作 イス
「この腕前を美術家の英人リーチがみとめて、例のリーチ好みの家具をこれに作らせた。一昨年神田小川町の流逸荘で展覧に付したのは即ちそれだ」(杉村楚人冠『白馬城』より)
「鷹大工」の愛称で親しまれ、杉村楚人冠はじめ我孫子にきた文人たちにもひいきにされたのが我孫子の大工佐藤鷹造です。
その仕事は記念館サロンの建付けの本棚でも見ることができますが、今回は通常は旧村川別荘にある、この随筆に登場するバーナード・リーチが作らせた家具の一つ、佐藤鷹蔵作のイスを展示しました。
個性あふれる職人たち
模造埴輪
「今一つは埴輪屋である。これはここの瀬戸物屋の主人が、この辺で発掘さるる土器を寸分たがわず模造して教育用品として売っているので、男女一対の人形と馬と円筒とで一組になっている」(杉村楚人冠『湖畔吟』より)
佐藤鷹蔵のほかにも、我孫子には個性あふれる職人たちがいました。この作品に登場する、瀬戸物屋が作る模造埴輪を、杉村楚人冠は昭和12年に落成した離れの茶室への道に飾っていました。そこにあった模造埴輪を展示しました。
モクトリの記憶
モクトリマンノウ
「この藻屑が肥料になるとて、朝靄の晴れやらぬ頃から、小舟に棹さしてこれを引き揚げている人の姿も、夏の趣を見せる。」(杉村楚人冠『続湖畔吟』より)
かつての手賀沼はガシャモクに代表される沈水植物が豊富な沼でした。楚人冠は「藻屑」と表現していますが、沈水植物を引き揚げて肥料にしていたのです。これに使われたのがモクトリマンノウ、あるいはモクトリマンガンと呼ばれた道具でした。
手賀沼のウナギ
ウナギガマ
「ここの湖水でとれる鰻は、沼の鰻と称して、東京の蒲焼屋の間では一等品とされている。味は元より、形も色も他と異ったところがあるので、玄人すじでは、暗やみでたべてもわかるという位である」(杉村楚人冠『続湖畔吟』より)
かつての手賀沼の名産で、東京へも盛んに出荷されたものといえば、鴨と並びウナギです。ウナギダルという筌を沈めて獲る漁法のほか、冬季には沼底にウナギが潜む穴を見つけ、そこをかいて獲るウナギガマも用いられました。かつての手賀沼の水がどれだけ澄んでいたかがわかる漁法です。