企画展「杉村楚人冠と柳田國男」
展示概要
2015年、我孫子市にゆかりのある二人の先人が節目の年を迎えました。ジャーナリスト杉村楚人冠は2015年10月3日に没後70年、日本民俗学の祖・柳田國男は同7月31日に生誕140年になりました。
これを記念して、友人同士でもあった楚人冠と柳田の共通の関心事を通して、二人が生きた時代を顧みる展示としました。
展示期間
2015年10月10日(土曜日)から2016年1月11日(月曜日・祝日)
1 出会い―南方熊楠の神社合祀反対
楚人冠と柳田はともに、和歌山県田辺在住の博物学者南方熊楠の神社合祀反対の訴えに力を貸しました。二人が出会うきっかけとなった柳田発行の『南方二書』を南方熊楠顕彰館から提供された写真で展示、その『南方二書』に触れた南方の楚人冠宛書簡は実物を展示しました。
2 農民へ向ける目
特派員として凶作地を視察した楚人冠、もともと農政官僚であった柳田。二人とも農民の貧困に対してどうすべきかを考えていました。楚人冠の小説『うるさき人々』から楚人冠が傾倒したヘンリー・ジョージの考えを、柳田の論文・講演集『時代ト農政』からは柳田の小作料金納論を紹介しました。楚人冠に小説の材料を提供した農民運動家杉山元治郎の書簡も展示しました。
3 方言に親しむ
二人は同じ刀江書院の言語誌叢刊シリーズで方言についての著作を出しています。楚人冠の『和歌山方言集』、柳田の『蝸牛考』と、『和歌山方言集』の出版に祝辞を贈った柳田の葉書を展示しました。
4 利根川図誌の世界
二人の共通の愛読書が、利根川沿岸の風物を書いた江戸時代の本『利根川図誌』でした。著者の赤松宗旦の家にかつて保管されていた貴重書(個人蔵)を展示し、柳田が岩波版『利根川図誌』(昭和13年発行)を校訂出版した後に、これを読んだ楚人冠に贈ったお礼の葉書に「少しはのびのびした読み物を世の中に供したく、今はまことに息つまり申しそうろう」とあるのを紹介しました。
5 歴史を見る目
柳田が「社会道徳の変遷」を味わえると評した楚人冠の蔵書『売卜先生糠俵』を展示しました。
このほか、柳田愛用の絵葉書数種を展示し、楚人冠と柳田の親しい付き合いを紹介しました。
柳田國男の写真絵葉書(杉村家蔵)
柳田國男邸の写真絵葉書(杉村家蔵)