テーマ展示「楚人冠の本棚 楚人冠のジャーナリズム文庫」
展示期間
令和3年5月15日(土曜日)から7月11日(日曜日)まで
展示概要
杉村楚人冠の蔵書を紹介する展示です。
今回は楚人冠ならではのコレクション、ジャーナリズム文庫から、新聞の歴史に関わるもの、東京朝日新聞の同僚たちの著書をピックアップして展示しました。
以下、展示品を一部ご紹介します。
1 欧米の新聞史に通じた楚人冠
ウィリアム・ハワード・ラッセルの伝記
イギリスの『タイムズ』紙を発展させた名編集者として知られる主筆ディレーン、そのディレーンによってクリミア戦争へ派遣され、世界初の戦地特派員と言われるウィリアム・ハワード・ラッセル。この二人の伝記を展示しました。
画像は、ラッセルの伝記から、クリミア戦争のページです。ナイチンゲールの看護活動に影響を与えるなど、報道の力を発揮したことが知られています。
チャールズ・デーナ著『新聞製作の手法』
ニューヨークの新聞紙『サン』の編集長だったのがチャールズ・デーナです。楚人冠の蔵書にはその著書 The Art of Newspaper Making(『新聞製作の手法』) がありました。
デーナの時代の『サン』は模範に取るべき新聞だという敬意をこめて「新聞記者の新聞紙」と呼ばれていました。楚人冠もデーナの手法を意識していたのでしょうか。
2 東京朝日新聞の同僚たち
成沢玲川『新聞戦線』と鈴木文史朗『世界に聴く』
杉村楚人冠と東京朝日新聞で同僚だったことのある人びとの著書を集めました。
多くは著者から楚人冠に贈ったものです。
大正12年に杉村楚人冠が日刊写真新聞『アサヒグラフ』をグラフ局長として創刊したとき、編集長の鈴木文史朗、技術部長の成沢玲川が楚人冠を支える部下のツートップでした。その二人の著書を並べて展示しています。
松崎天民『人生探訪』と渋川玄耳『従軍三年』
杉村楚人冠が東京朝日新聞に入った明治30年代、社会部の記事は政治記事などより下に見られ「軟派」と呼ばれていました。
それを現在に通じる社会面に変えていったのがちょうど楚人冠の時代です。
そんなとき、社会部を支えていた楚人冠の同僚二人の著書を並べました。
一人は渋川玄耳、法務官として従軍していた日露戦争のときに投稿した従軍記が好評で東京朝日新聞の社会部長に招へいされた人物です。
もう一人は松崎天民、繁華街を取材して様々な人間模様を描く探訪記事に定評がありました。
3 日本の新聞の始まり
『横浜新報もしほ草』を復刻した本
幕末維新期には様々な新聞が登場し、その中から現在につながる日刊新聞が姿を現してきます。
その時期の新聞に関する本を展示しました。
画像は横浜で発行された『横浜新報もしほ草』を復刻した本です。アメリカ人リードや岸田吟香が発行した新聞です。展示しているページは、榎本武揚の江戸脱出に対する新政府の触れを、英字紙から翻訳して載せているもので、まだ現在のような取材力を備えていなかったことがうかがえます。
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